今回は、実用英語技能検定という試験について書いてみます。
一番メジャーな英語の試験になります。日本で「英検®」と呼ばれるものの大半はこの「実用英語技能検定」のことを指します。
この試験は、1級、準1級、2級、準2級、3級、4級、5級の7つのレベルが指定されており、受験者はそのうち1つを選んで受験します。4級、5級では「リーディング」「リスニング」という2つの技能を、それ以外の1級~3級では「リーディング」「リスニング」に加えて「ライティング」「スピーキング」の4つの技能を測定し、合格か不合格かを判定していきます。
試験は6月、10月、1月の年3回実施され、多くの受験者は、例えば3級合格→準2級合格→じゃあ次は2級受けようか、、、というように、段階的に受験する級を上げていくわけです。ちなみに、3級からは二次試験として面接も加わってきますので、スピーキング力も試されるようになります。
級のレベルの目安は以下の通りです。
・1級:大学上級程度
二次試験では2分間のスピーチと、その内容への質問がなされます。
カギは英語の知識のみでなく、相手に伝える発信力と対応力。
世界で活躍できる人材の英語力を証明します。
・準1級:大学中級程度
エッセイ形式の実践的な英作文の問題が出題されます。
「実際に使える英語力」の証明として高く評価されています。
・2級:高校卒業程度
医療やテクノロジーなど社会性のある英文読解も出題されます。
海外留学、国内での入試優遇・単位認定など、コミュニケーション力が高く評価されます。
ビジネスシーンでも採用試験の履歴書などで英語力をアピールできます。ライティングが加わります。
・準2級:高校中級程度
教育や科学などを題材とした、長文の穴埋め問題が加わります。
高校卒業段階の英語力の達成目標:準2級~2級(文部科学省)
・3級:中学卒業程度
二次試験でスピーキングテスト。英語で考えを伝えましょう。
筆記試験の題材は、海外の文化など少し視野が広がります。
中学卒業段階の英語力の達成目標:3級(文部科学省)
・4級:中学中級程度
出題形式や内容が、より実用的に。
身近なトピックを題材とした読解問題が加わります。
基礎力をぐんぐん伸ばしていきましょう。
・5級:中学初級程度
英語を習い始めた方の最初の目標。
家族のこと、趣味やスポーツなど身近な話題が出題されます。
英語の基礎固めに最適です。
英検®公式サイト
https://www.eiken.or.jp/eiken/
きちんとレベル分けされて実施されますが、5級から受けなければいけない、などの縛りは特にないので、自分のレベルに合う級を受験するようにしましょう。例えば小学生なら5級か4級、中学生なら3級、高校なら準2級か2級を取得しておくと、周りよりも比較的英語力が高い状態と言えるでしょう。
(高校については学校の偏差値にもよりますが。。。)
一次試験では、「リーディング」「リスニング」「ライティング」の3つの技能を試されます。実は、それぞれの問いの配点は事前には決められておらず、受験者たちがどれくらい点数が取れているか、どこで間違えているか、などの情報によって後から配点が決められ、合否が判定されます。
ただ、合格に必要な点数は変わらず以下の通り指定されています。
(合格点/満点)
級 | 一次試験 | 二次試験 |
---|---|---|
1級 | 2028/2550 | 602/850 |
準1級 | 1792/2250 | 512/750 |
2級 | 1520/1950 | 460/650 |
準2級 | 878/1200 | 406/600 |
3級 | 746/1100 | 353/550 |
4級 | 622/1000 | – |
5級 | 419/850 | – |
3級以上は、英語力の向上よりも合格することを目的にする方が増えます。その場合は、英語の勉強に加えて過去問などで問題形式を把握しておくことが大切です。
3級以上の問題形式をまとめてみました。
大問1 | 英単語、英熟語の知識を問う、文章の穴埋め問題が15問出題されます。選択肢にある英単語、英熟語の意味が分かっていればほぼすべての問題に正答できます。 |
---|---|
大問2 | 対話文の中での穴埋め問題が出題されます。選択肢も3~5語程度の文章になっており、単語、熟語の知識に加えて文法の知識も問われます。 |
大問3 | 掲示板を見て内容について答える問題と、比較的文章の長い長文問題が出題されます。穴埋めではなく、長文の内容について問う問題なので、きちんと文章を理解する能力が求められます。 |
大問4 | 外国人の友達からの質問について、自分の意見と2つの理由を書く英作文問題です。語数の目安は25~35語です。 |
リスニング | 第1部はイラストを参考にしながら対話を聞き、適切な選択肢を選ぶ問題です。第2部は対話と質問を聞き、適切な選択肢を選ぶ問題です。第3部は英文と質問を聞き、適切な選択肢を選ぶ問題です。 |
大問1 | 英単語、英熟語の知識を問う、文章の穴埋め問題が20問出題されます。選択肢にある英単語、英熟語の意味が分かっていればほぼすべての問題に正答できます。 |
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大問2 | AとBの対話文の中での穴埋め問題が出題されます。選択肢も3~5語程度の文章になっており、単語、熟語の知識に加えて文法の知識も問われます。 |
大問3 | 長文の中での穴埋め問題です。大問2と比べて文章量が一気に増えるので、きちんと文章を読む力が試されます。 |
大問4 | 比較的文章量が多く、難易度が高い長文問題が出題されます。大問4は穴埋めではなく、長文の内容について問う問題になります。 |
大問5 | 英語で指定された質問について、自分の意見と2つの理由を書く英作文問題です。語数の目安は50~60語です。 |
リスニング | 第1部は対話が流れ、その対話が途中で終わるので、続きの言葉として適切な文章を選ぶ問題です。第2部は対話を聞き、質問に対して適切な選択肢を選ぶ問題です。第2部は英文を聞き、質問に対して適切な選択肢を選ぶ問題です。 |
大問1 | 英単語、英熟語の知識を問う、文章の穴埋め問題が20問出題されます。選択肢にある英単語、英熟語の意味が分かっていればほぼすべての問題に正答できます。 |
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大問2 | 長文の中での穴埋め問題です。大問1では短文の穴埋め問題だったので、選択肢の意味さえ分かっていれば正答できましたが、大問2は長文のため長文の意味まできちんと理解しながら読む必要があります。 |
大問3 | 比較的文章量が多く、難易度が高い長文問題が出題されます。大問3は穴埋めではなく、長文の内容について問う問題になります。 |
大問4 | 英語で指定されたトピックについて、自分の意見と2つの理由を書く英作文問題です。語数の目安は80~100語で、理由を書く際の参考となるPOINTがヒントとして3つ示されています。 |
リスニング | 第1部は対話を聞き、質問に対して適切な選択肢を選ぶ問題です。第2部は英文を聞き、質問に対して適切な選択肢を選ぶ問題です。 |
大問1 | 英単語、英熟語の知識を問う、文章の穴埋め問題が25問出題されます。かなり難易度の高い単語、熟語が出題されます。 |
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大問2 | 長文の中での穴埋め問題です。長文の意味まできちんと理解しながら読む必要がありますが、かなり長い文章なので、時間配分に注意する必要があります。選択肢も単語、熟語に限らず短文も出てきます。 |
大問3 | 比較的文章量が多く、難易度が高い長文問題が出題されます。長文の内容について問う問題です。選択肢の文章が長くなり、細かいニュアンスの違いも読み取る必要があります。 |
大問4 | 英語で指定されたトピックについて、自分の意見と理由を書く英作文問題です。語数の目安は120~150語で、指定された4つのポイントの中から2つを根拠に選んで解答します。 |
リスニング | 第1部は対話を聞き、内容が一致するものを選択する問題です。第2部は比較的長い英文を聞き、適切な選択肢を選ぶ問題です。第3部は、まず10秒間で問題用紙に書かれた状況と質問に目を通し、流れる英文から適切な選択肢を選ぶ問題です。 |
大問1 | 英単語、英熟語の知識を問う、文章の穴埋め問題が25問出題されます。かなり難易度の高い単語、熟語が出題されます。 |
---|---|
大問2 | 長文の中での穴埋め問題です。長文の意味まできちんと理解しながら読む必要がありますが、かなり長い文章なので、時間配分に注意する必要があります。選択肢も単語、熟語に限らず短文も出てきます。 |
大問3 | かなり文章量が多く、難易度が高い長文問題が出題されます。長文の内容について問う問題です。文中の表現がそのまま解答になることはほぼないので、文章を本質的に理解する必要があります。 |
大問4 | 英語で指定されたトピックについて、自分の意見と3つの理由を書く英作文問題です。語数の目安は200~240語です。 |
リスニング | 第1部は対話を聞き、内容が一致するものを選択する問題です。第2部は比較的長い英文を聞き、適切な選択肢を選ぶ問題です。第3部は、まず10秒間で問題用紙に書かれた状況と質問に目を通し、流れる英文から適切な選択肢を選ぶ問題です。第4部は、インタビューを聞いて、その内容について適切な選択肢を選ぶ問題です。 |
※リスニングは文章では表しづらいので省きます。
試験 | CEFR | TOEIC | TOEFL iBT | IELTS | その他 |
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5級 | CEFR A1 | ~120点 | ~10点 | ~1.5点 | GTEC ~200点 |
4級 | CEFR A1 | ~200点 | ~20点 | ~2.0点 | GTEC ~400点 |
3級 | CEFR A2 | ~300点 | ~40点 | ~3.0点 | ケンブリッジ KET TEAP ~135点 GTEC ~700点 |
準2級 | CEFR B1 | ~400点 | ~50点 | ~4.0点 | ケンブリッジ PET TEAP ~224点 GTEC ~1000点 |
2級 | CEFR B2 | ~530点 | ~60点 | ~5.0点 | ケンブリッジ FCE TEAP ~308点 GTEC ~1080点 |
準1級 | CEFR B2 | ~750点 | ~90点 | ~6.0点 | ケンブリッジ FCE TEAP ~374点 GTEC ~1300点 |
1級 | CEFR C1 | 900点以上 | 100点以上 | ~7.5点 | ケンブリッジ CAE TEAP ~400点 GTEC ~1400点 |
大学によっては、英検®取得によって共通テストの英語の点数が加算されたり、英語の試験が免除されたりします。また、総合型選抜や推薦入試などでは、英検®取得が受験の条件だったりもします。
大学受験で優遇されるには、少なくとも準2級以上は取得している必要があります。準1級以上を取得していれば、難関国公立大学の優遇を得られたり、国際系の大学で加点を得られたりします。
以下、国立大学で一般選抜入試に英検®の資格が利用できる大学です。
・秋田大学 国際資源学部:準1級以上
・国際教養大学 国際教養学部:準1級以上
・茨城大学 工学部:1400以上
・千葉大学 国際教養学部、教育学部(学校教員養成課程英語教育コース):1950以上
・千葉大学 園芸学部、看護学部、文学部(人文学科日本・ユーラシア文化コース)、法政経学部、教育学部(英語教育コース除く)、理学部、工学部、薬学部:2180以上
・東京海洋大学 海洋生命科学部、海洋資源環境:準2級以上
・東京海洋大学 海洋工学部:1400以上
・東京芸術大学 音楽学部:準1級以上
・長野大学 全学部:準2級以上
・金沢大学 文系一括、人間社会学域、理系一括、理工学域、医薬保健学域、融合学域:1950以上
・静岡県立農林環境専門職大学 生産環境経営学部:1700以上
・大阪教育大学 教育学部(小中英語教育、中等英語教育):2級以上
・大阪教育大学 教育学部(グローバル英語コミュニケーション):準1級以上
・兵庫県立大学 国際商経(グローバルビジネス):2級以上
・兵庫県立大学 国際商経(経済学・経営学):準2級以上
・叡啓大学 ソーシャルシステムデザイン学部:2級以上
・尾道市立大学 経済情報学部:2級以上
・広島大学 全学部:準1級以上
・山口大学 国際総合科学部:2級以上
・九州大学 共創学部:2300以上
・九州工業大学 全学部:1670以上
・佐賀大学 全学部:2050以上
・長崎大学 多文化社会学部:準1級以上
・宮崎大学 工学部:2級以上
・鹿児島大学 全学部:準1級以上
英検®の問題形式は級ごと基本的に毎回同じです。まずは過去問を沢山活用し、どういった問題が出題されるのかという出題形式と、大体どの問題にどれくらいの時間を要するのかという時間配分を把握してください。過去問が全て解き終わったら、その級の予想問題にも挑戦すると良いと思います。
また、合格には満点を取る必要はありません。苦手な形式の問題があれば後回しにするなど、どこを優先的に解くのかも必要であれば決めておくと良いでしょう。
どの級も共通しているのは、最初に単語力、述語力を問う問題が出題されるということです。文法力や長文を読む力があまりなくても、第1問は大きな得点源になるので、過去問や予想問題で分からなかった単語と熟語は片っ端から覚えましょう。それ以外の時間も、優先的に単語と熟語の勉強をしましょう。
級が上がれば上がるほど、出題される長文問題が長く難しくなっていきます。特に2級以上の長文問題では、内容を理解することに加えてスピードを上げるという工夫も必要になります。そういったトレーニングや最短時間で解けるやり方もありますが、なにより長文に慣れているかどうかが一番重要です。
長文に慣れていない人は、長文を見た途端に気持ちで負けてしまったり、焦ってしまったりします。焦りながら解いている人は落ち着いて解いている人よりミスが増え、諦めるのも早くなります。良いことがないので、何度も文章量の多い長文問題を解くことで、慣れていきましょう。
長文で良く見るフレーズなどは、そのフレーズを丸暗記するようにしましょう。単語は1つ1つ覚えるよりフレーズで覚えたほうが覚えやすい、という話は有名ですが、英作文問題があるので、自分が使える英文のレパートリーを増やす必要があるわけです。
自分で意見を考えて、理由も含めて英語で文章を作るという作業は、単語力、文法力がきちんとついていないとなかなか難しいです。誰もパーフェクトな人はいないので、作文に困ったときに使えるフレーズを覚えておくと助けになります。
また、リスニングの際にも役に立ったりします。単語1つ1つを意識していたら聞き逃してしまうことも多いですが、フレーズで覚えていたらその部分だけでも聞き取りやすくなります。