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日商簿記検定について知る

大塚
2024-08-18

簿記について知っていますか?

簿記とは、企業の経営活動を記録、計算、整理して、企業の経営成績と財政状態を明らかにする技能で、この習得度を測るのが日商簿記検定試験です。企業には、会社の一会計期間における経営成績を示す損益計算書(P/L)や、ある時点の財務状態を示す貸借対照表(B/S)などの決算書が存在します。企業の活動を正確に情報公開する、または公開されている情報を正しく読み取る、というときに、これらの決算書を理解している必要があるのですね。簿記とは、そういった企業の中のお金についての知識を指します。

簿記の試験には、この日商簿記以外にも「全商簿記」「全経簿記」の2種類があります。
全商簿記は、商業高校に通う高校生向けの資格で、難易度は一番低いです。全商簿記の1級が、日商簿記の2級くらいのレベルです。一方で全経簿記は、一番高いレベルが上級と呼ばれるもので、日商簿記1級と同じ範囲の出題ですが、少しだけ難易度が低いとされています。

取得によるメリット

日商簿記1級、または全経簿記上級を取得すると、税理士試験の受験資格が得られます。両方受験することができるので、どちらかが受かったら税理士受ける、という方が多く見られます。また、高校生のうちに日商簿記1級や全経簿記上級に合格すると、大体県内の新聞には載ります。

大学でも入試の際に有利に働いたり、就職でも高く評価をしてもらえたりします。また、ビジネスマンにとっても、企業の財務諸表を読み取る力が身につくので、企業のお金の流れや業績が把握できるようになります。こういった能力はどんな仕事にも活かせるので、簿記を理解している人材はどの企業でも重宝されるわけです。

簿記の内容

簿記には、「勘定科目」というものがあります。これは何かというと、取引の内容をわかりやすくするための分類のことを指します。例えば、なにか商品を売って得た利益は「売上」という勘定科目として処理をするし、その商品を仕入れるためにかかった費用は「仕入」として処理をするわけです。こうすると、どこで増えたお金なのかな?どこで使ったお金なのかな?というのが分かりやすくなりますよね。

さて、そのような勘定科目を使って、取引内容を記録していくわけですが、そういった作業を「仕訳」と呼びます。具体的に何をするかというと、なにか商品を売り上げた!という取引内容を記録したかったら、「現金 / 売上」という仕訳をします。この左側を借方と呼び、右側を貸方と呼びます。この書き方にはルールがあって、例えば今回なら現金を手に入れたら借方に書くとか、売上が上がったら貸方に書くとか、、、

逆に、現金を口座に預けた!という記録の場合、「当座預金 / 現金」となったりします。現金を減らして、口座の残高を表す当座預金という勘定科目を増やすわけですね。

こういった仕訳を何回も何回も繰り返して、「損益計算書」や「貸借対照表」というような決算書を作っていきます。

損益計算書(P/L)

損益計算書とは、先ほど軽く触れたように、会社の一会計期間における経営成績を示す決算書です。会社がどれだけの収益を出したのか?どれだけの費用を出したのか?という情報から、最終的に残った利益を計算していきます。
損益計算書では、この「利益」を5つに区分して計算していきます。

売上高ー売上原価=売上総利益

売上高とは、単純にものを売ったりサービスを提供したりしたときに得るお金ですね。10万円の機械が売れたら10万円の売上です。売上原価とは、その10万円の機械を仕入れるときや製造するときにかかった費用(原価)です。仕入れたり製造するのに3万円かかった機械が10万円で売れたら、10ー3=7万円得ですよね。この7万円を、売上総利益と言います。

売上総利益ー販売費及び一般管理費=営業利益

次に、この売上総利益から、販売費及び一般管理費というのを差し引いて営業利益を出します。「販売費及び一般管理費」の「販売費」というのは、商品や製品を販売するために直接かかる費用のことで、例えば宣伝をするときの広告費、販売に必要な手数料、取引先に移動する場合は交通費などを指します。「一般管理費」というのは、会社全般の業務の管理活動にかかる費用のことで、例えば会社の水道光熱費、通信費、社員に払う給料、社用の車に対するガソリン代などを指します。これらを差し引くことで、会社の本業における営業活動によって生じた利益が計算でき、営業活動が上手くいってたのかどうか?がなんとなく分かります。

営業利益+営業外収益ー営業外費用=経常利益

本業の営業活動によって出てきた利益である営業利益に対し、経常利益は本業以外の収益、費用もまとめたものです。つまり、営業利益から、お金を貸していることで得られる利息や、有価証券の売却益、為替の相場変動によって発生した収益などの営業外収益を足して、そこからお金を借りていることで支払わなければいけない利息や、売り上げる際に割引した金額などの営業外費用を差し引きます。これで、とりあえず本業以外のことも色々まとめたときの利益が出るわけですね。

経常利益+特別利益ー特別損益=税引前当期純利益

次に、この色々まとめたときの利益に対して、本来の営業活動以外で臨時的に発生した特別利益と特別損失を足し引きします。例えば、固定資産を売却したときの収益や、災害による損失などですね。こうすると、全部ひっくるめた税引前の利益が出るわけです。それを、税引前の当期に発生した利益、という意味で「税引前当期純利益」と言います。

税引前当期純利益ー法人税等=当期純利益

最後に税金を引いて、終わりですね。「税引前」という言葉が引かれて、普通の当期純利益という言葉になります。

損益計算書では、このように利益を5つに分類することで、どういう収益があってどういう費用がかかったのかをまとめ、最終的な利益を出すわけですね。

貸借対照表(B/S)

一方で貸借対照表は、企業のある時点での財務状態をまとめたものです。例えば資産がどれくらいあって、負債がどれくらいあって、、、というもので、具体的には「資産の部」「負債の部」「純資産の部」の3つに分かれます。

資産の部

資産の部は、その中でも「流動資産」「固定資産」「繰延資産」の3つに分かれます。
流動資産とは、現金や普通預金、売掛金など、通常の営業活動から生じる資産で、割とすぐに換金ができる、もしくはすぐに利用できる資産のことです。

それに対し固定資産とは、土地、建物、ソフトウェアなどの長期にわたって利用を予定している資産のことです。
残った繰延資産ですが、これは支出効果が1年以上に及ぶ費用のことです。どういうことかというと、既に支払い義務が確定したあとに、長期的に収益を生み出すものがありますよね。例えば研究開発費は、費用ですが資産計上が認められてます。なぜかというと、研究することによってその後の収益につながるからです。

負債の部

負債の部は、その中でも「流動負債」「固定負債」に分かれます。
流動負債とは、1年以内に支払う予定のお金のことです。例えば買掛金、支払手形など、既に商品は受け取っているがまだ支払っていないものなど、もしくは短期の借入金や預り金などが含まれます。
固定負債とは、逆に1年以上の長期間に渡って返済する義務を負っている負債のことです。長期の借入金や社債などですね。

純資産の部

純資産の部は、例えば資本金や新株予約権などです。簡単に言うと、資産から負債を引いたものです。

こういった数字から、企業の資金調達の方法だったり、財政状況だったりが把握できるわけですね。
簿記とは、こういった決算書から色々な情報を読み取る、またはこういった決算書を作るときに必要な知識なんです。

試験について

日商簿記検定は級ごとレベルわけされており、初級、3級、2級、1級があります。何割取れれば合格、という基準はありますが、問題1つ1つに対する配点は、受験者の得点率などを見てあとから確定されます。例えば、すごい難しい問題でも受験者がみんなできなければ、配点は低くなる、みたいなことが起きます。

初級

もっとも難易度が低く、簿記のなかでも初心者向けの基礎的な内容を中心としており、「ビジネスの基礎知識の1つとして簿記の基本を理解しておきたい」といったニーズに適した試験になっています。そのため、専門性の高い決算処理などは含まれません。
合格率は50~60%程度です。

3級

企業経理の基礎スキルや、確定申告に利用される青色申告書類の作成スキルが身につきます。一般的に履歴書に記載できるのは3級からなので、企業によっては就職や転職の際に有利に働きます。また、3級の勉強をとおして簿記の基本を学ぶことで、ビジネスパーソンにとって必要な会計の知識が身につきます。会計の知識をもとに経営を分析する力やコスト感覚なども磨けるため、専門職でなくても取得するメリットの大きい資格だといえます。

科目は商業簿記と呼ばれるもので、試験時間は60分です。100点満点で70点以上で合格です。合格率はだいたい30~40%程度です。
毎年6月、11月、2月の3回実施されます。

2級

財務諸表の作成だけでなく、記入数字がどんな意味を持つか理解することで、正しい活用スキルが学べ、経営内容も把握できます。日商簿記2級を保有していれば、会計や経理の専門知識を有する人材とみなされます。企業の経営状況についてもより高度な分析が可能となるため、幅広い業界・職種でのキャリアに役立ちます。

科目は商業簿記と工業簿記で、試験時間は各科目90分ずつです。商業簿記が60点満点、工業簿記が40点満点で、合わせて70点以上で合格です。合格率はだいたい20%~25%程度です。
毎年6月、11月、2月の3回実施されます。

1級

商業簿記や工業簿記の応用はもちろん、会計基準や会社法などの法的知識を理解し、経営分析につなげるスキル獲得に役立ちます。日商簿記1級を保有していれば、会計・経理のスペシャリストとして多くの企業から重宝されます。また、簿記と関連性のある公認会計士や税理士、中小企業診断士といった難関資格への足がかりにもなります。

科目は商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算の4科目で、試験時間は商業簿記と会計学で90分、工業簿記と原価計算で90分です。各科目25点満点で、合わせて70点以上で合格ですが、1科目ごとの得点で10点以上は最低取る必要があり、これを1科目でも下回った時点で不合格です。合格率はだいたい10%程度です。
毎年6月と11月の2回実施されます。

入試で簿記が使える大学

一覧を掲載しているサイトがありますのでご参照ください

勉強方法

3級

ここから簿記の勉強をスタートする人が多いと思います。まずは電卓の練習をしましょう。正確に早く扱うことができればできるほど時間短縮になって有利に働くので、試験まで毎日電卓を触って数分でもいいので練習を続けましょう。

簿記は基礎の部分がしっかりしていないと、今後2級、1級の勉強の際にも躓きやすくなります。3級の教材や通信講座などを用いて基礎を固めましょう。特に、「何がどの勘定科目に分類されるのか」という部分は今後もものすごく大切になるので、認識ミスを起こさないように正確に勉強していきましょう。

基礎が固まったら過去問を解きましょう。3級は難易度がそこまで高くないので、教材で学んだ内容がきちんと理解できていれば問題なく解き進めることができます。わからない問題は教材や問題集に戻って、確認していく、という作業を繰り返して進めてください。基本は覚えてるか覚えていないかに左右される問題がほとんどなので、ほぼ作業になるくらいに解き方を暗記しましょう。

2級

もしかすると2級から簿記の勉強を始めるという人もいるかもしれませんが、多くの人は3級を受けて簿記と電卓の使用に慣れてきた頃かと思います。まだ慣れていない方や2級から勉強をスタートする方は、まず電卓の練習を日々積み重ねてください。

2級からは、問題演習量がものを言います。2級用のテキストなどもありますが、一通り目を通してなんとなく理解できたら、すぐに問題集に切り替えてください。問題集を解いていく中で全然理解ができない問題があったらテキストに戻って復習しますが、少し曖昧だな、くらいであれば解き方や答え方を丸暗記してしまっても問題はありません。

2級には商業簿記と工業簿記の2種類がありますが、人によってどちらか得意でどちらが苦手かは分かれてきます。やっていることが違うので一緒くたにせず、きちんと分けて勉強をしましょう。合格するために満点を取る必要はないので、商業簿記で稼いで工業簿記は最低ラインを狙う、などの作戦を立てても良いです。

問題集は2,3周くらいできると良いです。とにかく問題に慣れて、解き方を覚えてください。それらが終わったら過去問に移ります。過去問でわからない問題があったら、テキストではなく問題集に戻ってください。似たような問題を探して演習して、解き方と答え方を覚えてから過去問に戻って解き直してください。

1級

1級は覚える量が多いという点で難易度が高いです。商業簿記、会計学、工業簿記、原価計算と4項目ありますが、「商業簿記+会計学」で1セット、「工業簿記+原価計算」で1セットです。商業簿記でやった内容が会計学に出てきたりするので、こういうセットで勉強を進めると良いでしょう。

1科目25点満点で、最低10点を取らないと足切りになってしまうので、どこか1つ2つの科目に山を張ってそこで稼ぐ、というやり方は少し危険です。

商業簿記は仕訳も難しい範囲が入ってきますが、何より仕訳の量がとても増えるので、電卓での計算ミスも増えるし、仕入と売上原価が逆だったとか、連結会計で非支配株主持分が借方貸方逆だったとか、間違えて税金を計上しちゃった、などの仕訳ミスが起きがちです。落ち着いて解くようにしましょう。だからといって、スピードがないと時間が足りなくなってしまうので、仕訳を省略して書くことをおすすめします。例えば「非支配株主持分 / 非支配株主に帰属する当期純利益」なんてのはめちゃくちゃ長いので、「非モ / 非リ」とかに略すと相当時間が短縮できますよね。

会計学は比較的暗記項目が多いので、頑張って覚えましょう。
工業簿記・原価計算は、商業簿記と形式は似ていますが、仕損の処理を間違えない、データを読み間違えないなど、ミスしないことが大事なので、注意しましょう。

とにかく2級同様問題演習量が一番大事なので、問題集を2,3周と、過去問や予想問題は10周くらいして問題と答えを丸暗記するレベルでやってください。


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